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岡田真宏
岡田真宏 作品制作
(2006年)
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心は体(・)を(・)持(・)っ(・)た(・)脳(・)である。私達は胎児の頃から全ての情報を形而下の世界から得、それを脳に伝えることで自身の生きる世界を認識し、それに対応してき た。こうして形創られた内的宇宙こそが、形而上の世界を創り出す母体となる。
世は正に情報化社会である。インターネット網は国境を越えて張り巡らされ、居ながらにし て世界中と瞬時にアクセスすることを可能にし、それによって時間と空間の壁が崩された。
脳はデジタルな器官である。対して外界から情報を収集する器官は全てアナログである。そ れは私達の住む世界がアナログであり、1か0かの感覚器では形而下の多くの情報が抜け落ちてしまうからである。私達は物質世界に身を置き、五感を使って得 たものによって毎日を生き、精神世界を創り上げてきた。しかしコンピューターの普及と共に山や海から子供達の姿は消え、彼等はデジタルでバーチュアルな世 界で遊ぶようになった。バーチュアル空間は体感を伴わない「場」のない世界である。そこは触覚も味覚も嗅覚もなく、視覚と聴覚だけが虚像とピュアな電子音 に反応する痩せた関係が支配する。五感の内、特に味覚と嗅覚は幼い頃の体感とその記憶が、一生における嗜好に深く関わる器官であり、触覚は人の原風景を形 創る核となる感覚を育む。視覚情報と聴覚情報は、それらの上に形而上の世界を構築する。そしてその出口が芸術や文学となる。
コンピューターは脳の外在化である。人類はこれを手に入れたことで、これまで成し得な かった多くのことが実現可能となった。宇宙探査や遺伝子解析、情報管理やインターネットなど数え上げれば限がない。正にこの電子脳は人の脳の諸機能を遥か に超えたスーパー知能となり、私達の望みを叶えてくれる夢の道具であるかに見える。しかしこの道具は脳の機能の中の幾つかの限られた領域を拡大、増幅する ものである。そしてこのバーチュアル空間の体験は、私達の生きる形而下の世界の「場のある体感」に置き換えられるものではないことを忘れてはならない。視 覚情報だけを取ってもコンピューターのR・G・Bによる色彩表現の数が何千万色を越え、億を越えようとも自然界の色には遠く及ばない。それは無限であり、 その一つ一つが日日変化するゆらぎを持っている。試しに億を無限大で割ってみると、その解は限りなく0に近くなる。億/∞は、やはり痩せた世界なのであ る。また太陽光は可視光だけを放っている訳ではない。可視領域を遥かに超えた赤外線、紫外線、X線、γ線などの広い領域を持っている。そして地球の防禦シ ステムを擦り抜けた光線や電磁波、月や太陽の潮汐力が私達や地上の万象に降り注ぐ。この体感はバーチュアル世界において経験することは不可能である。しか し紛れも無くその影響を私達は強く受け、心と体を掌るサーカディアン(既日)・リズムや潮汐リズムを作る。それらに感応するのは限られた器官ではなく、私 達の全身で享受するのである。人間の唯一つのデジタル器官である脳は、体というアナログな集合体を持つことにより心を形成することができるのである。
日本人の顔が変わった。ここ数十年、私はそう思うことが多くなった。一様に顔付きが貧 しくなり言動が粗野になった。それは老若男女を問わず場を問わず、日日の触れ合いの中で起る。街は往き交う人の放つ尖った「氣」で溢れ、歩を進める度に心 に刺さる。夢をもてない若者が増え、中高年が生き甲斐を無くす。マスコミは連日のように若者の脈絡の無い兇行や大人による年少者への卑劣な事件を報じる。 それは日本人の心から優しさと行動の美学が無くなった表れのように思う。それでも中高年は帰るべき場所を知っている世代であるが、アナログ体験の乏しいコ ンピューター世代の多くの若者は、心を育む時期に「場」の無いバーチュアル世界の経験しか持ち合わせていない。肌感覚の無い交わりからは、真の喜びや悲し みを感じることができない。それは似て非なる疑似体験であり、温もりや傷みを伴わないバーチュアルな感覚である。自然との、そして人との直接の交わりを学 習しないまま成長した心は、外の世界や対人関係をうまく作ることが出来ず、仮想空間の内に籠もるようになる。人の心はそれが形而下のものでも形而上のもの でも、自身の内にその受け皿の無いものには感動しない。それが深くて本質的な問い掛けをする創作活動が敬遠され、自ら努力をすることなく安易に理解できる 軽薄な表現が望まれるようになった所以であろう。しかし自然や人間との関わりは、深遠で複雑なものであり、多くの体感を伴う経験を重ねた末に見えてくるも のである。
現在私達の生活を支えているハイ・テクノロジーを遡って行くと、その全てがロー・テクノ ロジーに行き着く。これは人類が今日まで「発明」してきた数数のものの原点に「発見」があることの証である。無垢な目で自然を観、その力に驚く心が新たな 発明を生むのである。現代はハイテクの時代である。それ故に尚更ローテクの重さを認識しなければならない。ローテクは決して過去の遺物などではなく、デジ タルなハイテクを支える唯一のアナログ世界である。ローテクの中には有史以前からの人類が経験を通して贏(か)ち得た多くの知恵と 根源的な問いが内包されている。そしてそれらを繙(ひもと)くには自らの体と心 を使って先人の魂に近づく以外に手立てはないのである。
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