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岡田真宏 作品制作(2006年)
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水のごとく                     岡田真宏

宇宙は真空である。「真空」とは「真」に「空」である状態を言う。それは全くの「0」で あり「無」の虚空を意味する。それでは私達や星星は全くの無から発生したのだろうか。しかし完全なる0や無は物理的に存在しない。それでは宇宙は「有」か ら始まったかというと、それも違う。こんな堂堂巡りを瞬時に解き明かしてくれる図がある。「太極図」である。基本図形は巴紋に似るが、各各の中心に小円を 持つこの単純な形態は、宇宙の本体を読み解く鍵である。それは気一元を表し、分別できない宇宙の成り立ちを図解する。光は闇を内に、

闇は光を抱く。有は無を取り込み、無は有を合わせ持つ。そして生は死を孕み死は生と共に ある。この相容れない対極を一体と見る視座こそ、老子の言う「一つ」である。

西洋にはこれとは異なる世界観が芽生えた。「二元論」である。宇宙や全ての事象は相互に 独立した二つの根本原理によって成立するという理論である。それは「天と地」や「光と闇」に始まり、プラトンやアリストテレスの「形相と質料」、デカルト の「精神と物質」そしてカントの「理性と感性」など相対する存在はそれぞれ異なる原理によって成り立ち、その鬩(せめ)ぎ合いによって世界 は創られているという。このように分立することを原点とした理論体系は、やがて必然的にサイエンスをうむことになる。サイエンスには「分別する」という原義があり、全てのものを分類し類別に研究することによって、より尖鋭化し専門化してい く。しかし同時にそれは横の?がりを希薄にし、全体と部分との関係を見えにくくする危険性を孕んでいる。分別するには各各の関係を明確にしなければならな い。それには互いの領域を確定することが必要となり、結果として全ての存在の規範となる絶対存在を作ることとなった。ニュートン力学における時間、空間、 物の質量がそれである。これらはあらゆる条件下でも常に一定とされ、その絶対存在の上に構築された西洋近代科学を 私達は長い間、絶対無比に信奉してきた。この近代科学の考え方は、私たちの自然観や宗教観にも多大な影響を及ぼした。そしてそれまで先達が恐れ敬ってきた 様様な自然現象は科学の手でその正体が暴かれ、そこに住む神や鬼は居場所 をなくすこととなった。神や鬼の居なくなった万象は恐れの対象ではなくなり、況してや信仰の心などは残るべくもなかった。こうして自然は単に外 在する環境となり、人と響き合う関係ではなくなった。これは人と自然が一体ではなく、分離し対立する存在となった大きな転換点であり、人の傲りの芽生えの瞬間であった。全てのものは科学的価値観に照らされ、それに符合しないものは切り棄てられていった。斯(か)くして形而下の世界も形而上の世界も、理路整然とした単純にして明快な世界観の独壇場と なった。

しかし二十世紀を迎え、アインシュタインの相対性理論の登場により、それまで絶対存在と されたものの根拠は崩れた。全ての存在は相対的であり、不変なものはこの宇宙には無いことが証明された。その後相次いで提唱された量子論は、あらゆる存在 は不確定であり「ゆらぎ」の中にあると言う。宇宙に広がる真空は「有」でも「無」でもない。それは粒子と反粒子がセットになって生まれ(対生成)、そして 結合して消滅(対消滅)する現象であり、永永として繰り返される真空のエネルギーの生滅現象である。つまり真空 は完全な「無」ではなく、粒子と反粒子という「有」との間を揺らいでいることになる。物質を形成する素粒子と言う根本粒子自体が、生まれたり消滅したり、 別の粒子に変わったりする。これが「真空の揺らぎ」であり、これこそが自然界が曖昧で不確定であるということの証明である。太極図は正にこの万物の成り立 ちの大本を形にしたものであり、相反するものが相合わさり一つとなって万物を形創っていることを示唆している。西洋の現代科学の行き着いたところは、古代 中国の易学から生まれた宇宙論であった。私たちは開国以来、西洋の近代文明の後を遮二無二追ってきたが、結果として自らの尻尾を見ることとなった。

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