門坂 流 展
会期/2011年4月2日(土)〜24日(日)
10:00am〜6:30pm 休廊:火曜(予約営業)、水曜
会場/あーとらんど ギャラリー
出品/銅版画を中心にドローイング ‥‥ 30余点
作家在廊/2011年4月2日(土)午後〜・3日(日)
あーとらんどギャラリーでは、きめ細かな流動する線によって自然の本質を生き生きと表現することで知られている門坂 流の銅版画を中心にした展覧会を開催いたします。今展は2005年と2006年に続く3回目の個展。門坂は1948年に京都で生まれ、68年に東京芸術大学油絵科入学、73年から鉛筆・ペン画で創作活動を始め、現在は東京を拠点にグラフィック関係の仕事や版画・ドローイング などの制作活動を続けています。
門坂の作品を見た人は、次のような経験を思い出すことはないだろうか。細密に描かれていれば描かれている絵ほど、その絵のもつ生命感が失われていくという経験。例えば、江戸時代に活躍し、超絶した技巧と斬新な構成で現在も高い評価を受けている「若冲」が、得意とする鶏を描いた絵(例えば、群鶏図押絵貼屏風)の場合がそうだ。確かに、その迫力と華麗な姿には誰も驚かされるだろう。しかし、その鮮やかな彩色を施された鶏の姿は、同じ作者の墨で描かれた鶏(例えば、群鶏図押絵貼屏風)がいかにも生き生きとしているのに較べ、何故か画面に張り付いているかように、ふと、感じるのではないだろうか。
この比較は何も「若冲」に限ったことではなく、絵画として「真」なるものを表現する問題として世の東西を問わず存在している。中国では、古くから「気韻生動」という言葉で、人物や動物の生命感あふれる「真」なるものの表現に対する評価を行い、後にそれ以外の様々な対象の評価にも拡張してきた。門坂はこの問題に対して、「流動する線」を用いることによって、自然の本質を生き生きと表現する新たな一つの方法を導き出しているといえるだろう。
彼がその方法を思いついたのは、フェルメールの「レースを編む女」をジーッと見ていたとき、全体が動き出すように見えたという自らの体験からである。その動きを流動する線に置き換え、「見えるがままに描く」という。説明を聞くと一瞬成るほどと思われるが、対象の輪郭を省略していきなり脳に写った動きを線に置き換えていくのは、デッサンのいろはを知っている人にも、ましてやベテランの画家にとってさえ、神業としか思えないだろう。
今回の個展に際して、是非その方法を企画展講座で教えてほしいという申し出に、「それは教えられるものではない」と固辞されたのも当然のことだった。「だからこそ体験してみる機会を与えてほしい」という願いに、最後は同意していただいた今回の試み、眼から鱗が落ちるような経験ができるのではないだろうか。
個展以外の最新ニュースでは、今年直木賞を受賞した道尾秀介さんの、文藝春秋「オール読物」3月号に掲載される受賞作品「月と蟹」の挿画3点を依頼だ。益々エネルギッシュに活躍する作家に書いていただいた「私の表現について」を以下に紹介します。
「私の表現について」 (文:門坂 流)
「表現として絵を描き始めたのは鉛筆画が最初でした。装画の仕事の都合でペン画や水彩画と出会い、ようやく線が自分の感覚の表現に合致している事を確信しました。
ペン画集「風力の学派」を出版した頃から老眼になり始め、今までのような眼と手の運動の身体性が損なわれはじめ、壁を感じだした頃に銅版画に出会いました。
今回の個展の中心作品は、銅版にビュランという道具で直接線を刻みつける技法で「エングレーヴィング」と云い、15世紀にドイツで生まれアルブレヒト・デューラーが有名ですが、身近には紙幣がエングレーヴィングで制作されています。
銅版にビュランの稜の尖端を当て、版の内側に滑らかに入っていきます。仕事は緩やかに、時を刻み付ける感じで進めます。ビュランを持つ手はほとんど動かさず、押し当てる力の強弱と左手による版の回転で線刻します。
主題は常に流動している森羅万象で、そのリズムに眼と手を共鳴させ、出来る限り対象の観念を「無」にするように心をコントロールして、見えるがままに描き続けています。」
尚、今展では、銅版画を中心にドローイング(水彩画やペン画など)を加えて30余点を展覧いたします。「描き続けることができればいい」というきさくなお人柄ですので、是非とも多くの方に作家との交流を楽しんでいただきますようご案内申し上げます。
敬具
■ 作家在廊日 ‥‥ 2日(土)午後・3日(日)
<<企画展講座>> 線で描くオリジナル水彩画に挑戦!
門坂さん独自の極細線で描く水彩画の技法に挑戦し、眼から鱗の
落ちる絵作りを体験!!事前に会場までお申し込み下さい。
■ 日 時 : 4月3日(日) 午後2時 より
■ 募集人数 :20名
■ 会 場 : あーとらんど ギャラリー TEL 24-0927
■ 参加費用 : 2,000円(材料代含む)
以上
(文責:山下高志)
|