安冨洋貴 展
会期/2009年 4月16日(木)〜30日(木)
11:00am〜7:00pm 休廊:4/22水),29(水)
, 会場/あーとらんど ギャラリー 1Fギャラリー
出品/ドローイング(シルバーヒルケント紙に鉛筆)‥‥ 約15点
あーとらんどギャラリーでは、安冨洋貴さんのドローインングの展覧会を
開催いたします。安冨さんは、1978年に香川県で生まれ、現在京都を拠点
に活動しています。
安冨さんは京都造形芸術大学 大学院修士課程修了後、2001年から鉛筆画を
描きはじめました。使っている鉛筆は、主として4Hから2Bの硬度のもので、
それより薄いのは6Hとか9H、濃いのはグラファイト鉛筆(木部の全くない、
すべてが芯で出来た鉛筆)や黒色鉛筆です。気になる風景の写真を撮り、それ
を元にして、シルバーヒルケント紙等の純白のものに、ハッチング(細かい平
行線を引く技法)で描く。モチーフは誰もが知っている、また共有しているよ
うなもので、その場特有の細部を省略して、色彩もモノクローム(単色画)で
ある。(註1)
安冨さんがこのような鉛筆画に行き着いた背景や動機について、今回の個展
に際して次のような文章を寄せていただきました。「どんなに重ねても失われ
ない透明感」という言葉の中に、安冨さんが生まれて此の方までの、深い祈り
のような時間が重ね合わせられているように感じます。また、昨今の時代、託
すことを諦めかけた救いへの希望が聞こえてくるような、そのような時代を予
感する言葉ににも響いてきます。
「どんなに重ねても失われない透明感」 (文:安冨洋貴)
「夜」をモチーフに鉛筆で描いています。
漆黒の闇夜の中、雨は止むことなく降り続いています。
誰もいない、茫洋とした夜の中に出会った、求心的な光に包まれたそれと、
自分の波長が一致したように感じられ、心許せる一体感を覚えます。
どこにでもあるような貧弱なビニール傘やまちの片隅が、何かかけがえのな
い『拠り所』に思えてきて、何とかしてこの光景を残しておきたいと思うよ
うになりました。
文明によって昼夜がゆがめられている現代でも、変わらず夜は人を落ち着か
せます。
こわばっていた心の扉を融解させるような、強い魅力や魔力というものが、
夜には在るのではないかと思います。
夜の心象光景を描くにあたり、単なる黒色ではない独特の色彩、どんなに重
ねても失われない透明感を求めて鉛筆という素材に辿り着きました。
硬質な手ごたえのある筆致を幾十、幾百と重ねる工程には、如何にも「留め
ている」という感覚があります。
織物が織り込まれるように、想いが画面を埋め尽くせばと思います。
(以上)
今展では、安冨さんが雨の夜の中で出遭った、透明のビニール傘を描いた作
品を中心に、約15点出品致します。是非、不思議な透明感のある安冨さんの世
界を楽しんでいただきますようご案内申し上げます。
敬具
(註1)安冨洋貴インタビュー peeler 代表・ディレクション/藤田千彩
http://www.peeler.jp/people/yasutomi/index.html から引用
以上
(文責:山下高志)
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