北川健次 展
　　　　　　　　　
　　　会期／2009年３月１５日（日）〜２９日（日）
　　　　　　11:00am〜7:00pm　休廊：3／18(水),25(水)
　　　会場／あーとらんど ギャラリー　１Fギャラリー
　　　出品／新作版画集、オブジェ、インクジェット写真‥‥‥ 約 20 点

　あーとらんど　ギャラリーでは、北川健次さんの新作銅版画集の展覧会を開
催致します。北川さんは、福井県に生まれ、現在東京を拠点に活動しています。

　北川さんの作品は2005年から紹介を始めましたが、その年には2001〜
2004年に出版された３編の版画集を展覧しています。その内訳は、2001年出
版のサン・ミケーレの計測される翼 (5点組) 、2003年出版のローマにおける
僅か七ミリの受難 (6点組) 、そして、2004年出版の反対称/鏡/蝶番 夢の通路
-VERODODATを通り抜ける試み (8点組) です。その後、2006年は『黄金律
ーANTESに降る七月の雨』(7点組)、2007年は『Elementー回廊を逃れてゆく
アポロニオスの円』 (8点組) と続き、今回出版の『鏡面の詩学ージョン・フレ
ミングの仮縫いされた肖像』の６作目の紹介になります。

　北川さん自身の解説によれば、初めの３編の版画集の統一テーマは「イメー
ジを皮膚化する試(1)」、すなわち「版画という平面を『イメージの仮の皮膚』
として捕らえる(1)」という試みであり、「版画１点が１点としてのイメージの
自立性を持ちながら、版画集における他の作品ともリンクする、そういうスリ
リングな構造(1)」を立ち上げるのが狙いです。この姿勢は４作目以降から「距
離の詩学」、「二次元のオブジェ」、「鏡面の詩学」、「仮縫いされた肖像」
などの新たな表現に言い換えられているものの、「版画集に独自な表現の可能
性を求め続けている(1)」という本質は変わっていないようです。

　このような北川さん自身の方法論とは別に、時間という切り口から眺めてみ
ると、彼はあたかも骨董品を制作しているようにも見えます。素材は過去の記
憶に繋がるイメージを擁しているものを周到に選び、制作した今という時間を
過去へと変容させるための様々な仕掛けを施し、恰も誰にも知られず過去から
存在し続けてきたものとしての様相を与えてます。
　その主要な役割を担っている「黒」色は記憶の背後に横たわる暗闇のことで
あると同時に、時代の感覚を表象する空間装置、すなわち記憶に時間的な距離
の次元を与える役割をを付与しています。それを見る者は現在から過去へと溶
融する時間に身を委ね、作り手のイメージのしとねに誘い込まれてしまいます。

　今回の展覧会では、新作版画集『鏡面の詩学ージョン・フレミングの仮縫い
された肖像』に収められている銅版画８点およびタイトル１点に加えて、オブ
ジェとパリで撮影した写真を出品致します。また、これまでにコレクションし
てきた版画集３編も出品致します。希有な才能が生み出す創造性に満ちた版画
集を是非とも多くの方にご高覧いただきます様ご案内申し上げます。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　敬具

　　註(1)　北川健次さんのテキスト　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（文責：山下高志）