上野剛児 展
会期/2009年 2月19日(木)〜 3月1日(日)
11:00am〜7:00pm 休廊:2/25(水)
会場/あーとらんど ギャラリー
出品/壷、食器、酒器、花器、茶碗 等 ‥‥‥ 約 60 点
あーとらんどギャラリーでは、上野剛児さんの焼き物の展覧会を開催致しま
す。上野さんは1969年に岡山に生まれ、現在香川県を拠点に活動しています。
2005年に東かがわ市に築窯した上野さんは、主に南蛮手の焼締め陶を制作
しています。南蛮焼は、概略、ベトナム・タイ・フィリピンなど、東南アジア
方面で焼かれた無釉の焼締陶をさしますが、特に、粗い黒茶色の土を使用した
焼締陶をさす場合が多いようです。彼がこの焼き物に出会うまでを簡単に追っ
てみましょう。
上野さんが芸術系の高校を卒業してあこがれのデザイナーの仕事に入ったの
が1990年。カー用品の開発部門で様々な商品デザインを制作する舞台に立っ
てみると、売れる商品としてのデザインが優先され、自らデザインした形が最
終の商品に成らない現実の壁が立ち塞がる。「もっと生きる実感を味わいたい」
という思いから94年に退職し北米大陸や東南アジアを放浪。その後、次第に
「大地に根を張って生きたい」という思いが強くなり、97年福井県窯業指導所
に入所した。ここではガス窯の研修を受けていたが、ある日知人に誘われて訪
れた製陶所で出会ったのが薪を焚く「穴窯」だった。そこで出されたお酒の器
に感動し、夜中の静寂に包まれた窯焚きの炎と煙を目の当たりにして、「これ
や」と思ったという。その時の器が南蛮焼きのぐい呑で、その後能登のお店で
偶然手にしたどんぶり鉢が同じ作者のものと解り、98年森岡成好氏に弟子入り、
4年後に独立して自ら窯と仕事場を造って現在に至っている。
そして今、彼が作陶で目指しているところは何か、彼の言葉に耳を傾けてみ
よう。
「私の目指すところ」 (文:上野剛児)
20代の頃、旅の途上で考えた事、それは自分のこの両手をどうやって使
うか、という事です。会社勤めをしていた頃の様にコンピュータのキーボ
ードを指先だけでたたくのではなく、もっと手のひら全体を生かしたい、
素材を直接掴んで感じたい、その思いが子供の頃から好きだった土いじり
へと向かわせました。
そして、この道に入り修業時代を経て独立し作陶する上で目指すもの、
それはある特定の作家などではなく、あくまで表現するものです。
「枯淡な中に、無限の色彩を秘めた焼物に憧れ、求め続けています。」
私の仕事には、南蛮手、灰釉等ありますが、素材や手法は違っても、目指す
ところはこの一言に尽きます。 (以上)
今回の展覧会では、壷、食器、酒器、花器、茶碗 等を約60点出品致します。
「土の味が出ている南蛮手は、料理が生きるし、野の可憐な花がよく似合う」
という上野さん。是非彼の作品を手で触れてみていただきますようご案内申し
上げます。
敬具
(文責:山下高志)
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