会期/2007年 10月18日(日)〜 30日(日)
11:00am〜7:00pm 休廊:9/19(水),26(水)
会場/あーとらんど ギャラリー
出品/版画、彫刻、ドローイング、コラージュ‥‥ 約25点
あーとらんど ギャラリーでは、99年、2000年および2001年に続いて、青木野枝さんの平面作品と彫刻小品の展覧会を開催致します。青木さんは、1958年に東京に生まれ、現在東京を拠点に活動。鉄の厚板を溶接機で棒状や輪の形に溶断した状態のものを素材として作品を制作する彫刻家として知られています。
青木さんは版画をはじめ、ドローイングやコラージュなどの平面作品にも意欲的に取り組んでいます。今年4月に韓国ヘイリー芸術村で開催された彫刻と平面作品の大規模な個展を目の前に控えながらも、今回出品する新作銅版画を制作。大作2点、小品12点からなる「水天」シリーズは、青木さんにとって最も馴染みのある金属による2次元の彫刻と呼べるかもしれません。立体としての形を表現したものと、その立体が設置された空間で醸し出す雰囲気を描いたものがセットになり、一枚一枚が独立した作品というより、表現しようとする全体のイメージを構成する素材のようで、壁面にぐるりと一周するように展示すると、その空間全体に一つの大きな彫刻作品のイメージが立ち上がってくるからです。
青木さんのこのような版画の特徴は、次のような言葉に現れています。
「完成度を追求していくと何か大事なものが失われるような気がするので(……)できれば混沌としたものは版画に出していくという感じ」*1)
混沌が調和(完成)を産み出す源泉だと考えると、青木さんの版画制作の方向の一端が見えてくるようです。青木さんのこのような考え方は、彫刻作品の制作にも通じているようで、次のように表現しています。
「私は彫刻を作っているときも完成図が全部頭の中にあって、そこに持っていくというよりは、ある程度溶断とか切るところで努力しておいて、持っていって組み立てる時の着地点は凄く広くて、このマルがここにあろうと、そこにあろうがそんなに変わらないという状況で作っていくんですね、(……)」*2)青木さんは、独立し完成した量塊という絶対・永遠の存在を作るのではなく、溶断という方法によって混沌状態に引き戻された鉄の素材を空気、光、空間の中に投入しながら、混沌という自らが移ろい行く空の世界を現前する、これが青木さんの目指す彫刻の姿ではないでしょうか。
青木さんが昨年彫刻制作の今後を語った言葉を紹介しておきます。
「最近気になっているのは空気に含まれているいろいろなものたちです。目には見えないけれど確実にそこにあるもの。それは私のまわりにあり、私の内部にある。そんな私がつくるものは、顕微鏡で見る世界、あるいは天体望遠鏡で見る世界のようになっていく。」*3)
今回の展覧展では、大作2点、小品12点からなる新作版画「水天」シリーズを中心に、立山シリーズの彫刻小品、ドローイングおよびコラージュを加えて約25点出品致します。是非ご高覧頂きますようご案内申し上げます。
敬具
出典
*1)「ギャラリー2007 Vol.7」(j株式会社ギャラリーステーション) 21頁
*2)同上書23頁
*3)Sun, 30 Apr 2006電子メール「ハシモトアートオフィスから青木 野枝、真島直子、山本糾についてのお知らせ」(ハシモトアート
オフィス橋本かがり)
(文責:山下高志)